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2024-05-17

【相撲編集部が選ぶ夏場所6日目の一番】大の里が3度目の対戦で初めて琴櫻を撃破。初Vヘも大きく前進⁉

琴櫻が上手投げを打ちにきたところ、サッと右腰を寄せ、右ヒザを使って寄り切った大の里。また壁を一枚打ち破り、成長を感じさせた

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大の里(寄り切り)琴櫻

これまで2度はね返された壁を、3度目に打ち破った。
 
大の里が大関琴櫻から初の白星。しかも一気に攻めての寄り切りと圧勝、1敗対決を制する白星でもあり、優勝争いの上でも中心に躍り出る1勝となった。
 
過去、この2人の対戦成績は琴櫻の2勝。大の里新入幕、当時の琴ノ若が関脇で対戦した1月場所の初対決は立ち合いから二本差した琴ノ若が攻め立てて寄り切りと貫録を示した。琴ノ若新大関の3月場所の2度目の対戦では、大の里は今度は琴ノ若のモロ差しを阻止して右差し。琴ノ若は左上手も取れなかったが、いったんイナしてかわし、右を差した大の里が勢いに任せて出ようとするところを左からの小手投げで転がした。つまり、過去は琴櫻の連勝だが、内容的には一番ごとに大の里が差を詰めていることがうかがえた。
 
そして迎えた3度目の対決。立ち合いはやはり琴櫻はモロ差し狙い、大の里は右差し狙いだったが、一度は大の里がはじいたような形で差し手争いとなった。
 
はじいた後、差し勝ったのは大の里。しかし琴櫻は左の上手に手を掛けた。琴櫻はすぐに左に回って上手投げ。ただ、これはちょっと安直だったかもしれない。少し自分の体が浮くことになってしまった。大の里がすかさず右腰をぶつけるようについていくと、琴櫻は全く粘ることもできず、正面土俵に寄り切られた。

「全然分かりません。しっかり集中します」と敗れた琴櫻は言葉少な。先場所は小手投げで転がしているだけに、上手を取ったところで投げで決着をつけられると思ったのかもしれないが、まだ相手の出足を止めていない状況での投げは危険すぎた。

「(右差しの形も)考えてないです。覚えていない」と、大の里は相撲内容に関しては多くを語らなかったが、大関をいっぺんに攻め切ったのだから内容が悪いわけはない。立ち合いからの圧力が、琴櫻に投げを選択させたという見方もでき、文句なしの白星だった。
 
今場所は初顔合わせの髙安に黒星を喫している大の里だが、この琴櫻戦でも分かるように、同じ対戦相手に対して「前回の対戦より内容が悪くなった」というカードがほぼ見当たらないところが頼もしい。入幕3場所目、まだまだ成長曲線が急角度であることが示されているからだ。
 
今場所の優勝争いを考えても、琴櫻の自力Vを消して、一歩前に出たことは大きい。前に、御嶽海との全勝対決を制してただ一人全勝を守った宇良はいるが、宇良は三役との対戦がおそらく明日から目白押しとなることが予想され、まだまだ本当の戦いはこれからだろう。
 
大の里は、これで三役戦は豊昇龍、阿炎を残すのみ。平幕では大栄翔、宇良、そして過去2戦2敗の阿武咲といったところが怖いが、この5人と3勝2敗でいったとしても結構な星が残るので、もはや終盤まで優勝争いに残る可能性は上位陣の中で一番高いと言っていい。実質的に本命の座に躍り出たといえるだろう。「番付が上がって上位総当たりで前半は厳しいんじゃないかと思っていました」というところでの5勝1敗。むしろ優勝争いの緊張感がない序盤で上位戦を多く終えられたことが吉と出るか。
 
大の里がもし優勝することになれば、幕下10枚目格付け出しからのスタートとはいえ、初土俵から7場所目という快記録。先場所の尊富士に続き、またも若武者の歴史的優勝を、我々は目にすることになるかもしれない。

文=藤本泰祐

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