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2017-09-07

今季のアジアリーグは超・短期決戦。1試合、1試合のドラマを堪能したい。

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開幕カード、9月2日のアイスバックス-王子は、霧降のスタンドが1600人以上のファンで埋まった。プレーの1つひとつに反応があり、それが選手のエネルギーにつながっていく良い循環があった

 9月2日、アジアリーグ開幕。日光霧降アイスアリーナでアイスバックス-王子1回戦を取材した。東武日光駅からのシャトルバスは「1人で日光まで来ましたが何か?」という強者がほとんど。それはそれで頼もしかったが、スタンドはいつもながら親子、夫婦、友人同士のファンが多く、試合前の練習の時点で空気ができあがっていた。好勝負はえてして、こういうムードの中で生まれるものだ。

 第1ピリオド。スタンドの熱を味方につけて、バックスがスピーディーな組織プレーを見せる。攻め出しの態勢が十分ではないと判断すると、いったんDゾーンに戻してパスをつなぎ、リグループしてエントリー。FWがサイドレーンを駆け上がった際も、無理して1人で切り込むのではなく、Oゾーン内でディレーして味方の上がりを待ち、攻撃に厚みを加えていた。攻めにおいても守りにおいても人数をかけて、パックの支配時間を長くしようという意図が感じられる。隣り合った記者も思わず「つなぐなあ…」と声を上げていたが、シッキネン監督が目指しているのはこういうホッケーですよというメッセージが、スタンド上段にまで伝わってきた。

 バックスとすれば、この1ピリのうちに先制したかった。実際、王子ゴールを脅かすシーンはたびたびあったのだが、決定的なシュートにつながらない。バックスが先制すればスタンドがより熱を帯び、チームの勢いも増したはず。逆の見方をすれば、我慢すべき時間を耐え抜いた王子がさすがだったというべきか。

 試合折り返しの2ピリ10分、自陣ゴール裏からのパスがGKの正面にいた王子・髙田航太に渡り、バックスはあっけなく先制点を許す。それまでの豊富な運動量が得点につながらず、しかもミスで失点したことにより、これを境に選手のエネルギーが目に見えて下がった。逆に王子は、今がチャンスとばかりに先制から2分と置かずにPPゴール。3ピリはバックスが立て直したものの、試合の趨勢は変わらず、王子の3-0で終了のブザーが鳴った。

「1ピリは正しいホッケーをしていたが、2ピリはウチのホッケーではなかった。先制を許してから運動量が落ちたのは、メンタルが理由でしょう。60分間、しっかりしたホッケーをしないと、王子のような力のあるチームには勝てません。チームとしての完成度はどのくらいか、ですか? ちょっとその質問には答えられませんね」とシッキネン監督。目指すホッケースタイルは確実にチームに浸透しつつあるものの、今季は学習や経験のための試合をつくれない。第2戦はGWSで星を落としたが、バックスとしては早く勝利という結果が欲しいところだ。

 勝った王子・桜井邦彦監督は、「昨シーズンのプレーオフ、ウチは地元の大勢のファンの前で連敗してしまった。選手もその悔しさを忘れていないし、開幕に向けていい準備をしてきた。まずはホッとしています」。3つのピリオドでいずれもシュート数はバックスが上回っていたが、「むやみに打つのではなく、選手同士で考え、つないで攻めてくれた」と収穫を口にした。

 注目された新外国人のウイング、バリー・タラクソンは、この試合を見る限り、がむしゃらに突っ込んでいくというより、周囲を生かすことを念頭に置きながらゴールを狙える時は狙っていくというタイプ。「昨シーズンは(前在籍のDELベルリン)チーム事情もあってアイスタイムが少なかったと聞いています。試合勘が戻れば、さらに良くなるはず」と桜井監督は期待する。

 開幕4カード2連戦は、フリーブレイズ、サハリン、王子がいずれも連勝。王者ハルラを含め、バックス、日本製紙が連敗と明暗が分かれた。今季、レギュラーリーグは12月下旬までと、昔の日本リーグのような日程だが、終盤になって「あの試合で勝ち点1を取ったのが大きかった」「あの試合で60分勝ちしていれば今ごろは…」という展開になるのは間違いない。1試合が持つ重みという点では、例年にない価値を持つ今季のアジアリーグ。短期リーグだからこその楽しみをスタンドで味わいたい。


※8月31日発売、『アイスホッケー・マガジン2017-18選手名鑑号』の33ページ、日本製紙・大津晃介選手の成績欄に誤りがありました。以下のように訂正いたします。読者の皆様、アイスホッケーファンの皆様、日本製紙クレインズおよび大津選手に大変ご迷惑をおかけいたしました。

 下記から印刷用のPDFをダウンロードいただけます。

http://www.sportsclick.jp/user_data/event/ootsu_meikan2017.pdf

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